世界の消費を牽引するジェネレーションX
~責任感と現実主義が支える「サイレント·マジョリティ」の力~
 
Z世代やミレニアル世代が注目を浴びる一方で、「忘れられた世代」とも呼ばれるジェネレーションX(1965〜1980年生まれ)は、静かに世界経済の屋台骨を支えている。2025年現在、彼らは45〜60歳前後。全世界で約14億人、人口の17%に過ぎないが、その消費インパクトは圧倒的だ。
 
もしX世代をひとつの国とみなせば、彼らの年間消費額は15.2兆ドル――現在の中国の2倍に達し、世界第2位の消費大国となる。2021年から始まった「X世代の10年」は、少なくとも2033年まで続く見通しだ。ドイツ、日本、英国、米国など高所得国では、その影響力は2036年ごろまで維持されると予測されている。
ジェネレーションXは、2033年まで世界の消費支出を主導すると予測されています。
画像出典:World Data LabX世代は現在、収入と支出のピークを迎えている。高学歴・管理職層が多く、職場では中核的な立場にあり、家庭では「サンドイッチ世代」として、下の世代(ミレニアル・Z世代)の子どもと、上の世代(ベビーブーマー)の親を同時に支えている。
 
彼らは家計の“CFO(最高財務責任者)”として、多世代の消費を実質的に決定する存在であり、その支出パターンには「責任」と「現実主義」が色濃く反映されている。
 
特に注目されるのがX世代の女性だ。彼女たちは世界の消費支出の70~80%に影響を与え、年間3.18兆ドルを動かすパワーを持つ。アメリカではX世代女性の平均年間支出は約7.6万ドルに達し、2030年には10万ドル近くに到達する見込みである。
 
今後3年間、X世代が最も多く支出する分野は以下の通り:
- 高齢者および扶養家族のケア
- 教育関連支出
- レジャー用耐久財(楽器・ゲーム機など)
- 旅行
可処分所得に限りがあっても、生活の質を高める分野への投資を続ける傾向が強い。
 
アルコール分野では、ワイン(2,380億ドル)、スピリッツ(1,760億ドル)、ビール(2,780億ドル)と合わせて**世界の消費の26%**をX世代が占めている。また、美容分野でも全体の25%を担い、2030年までにさらに800億ドルの市場拡大をもたらすと予測されている。そのうちの約3分の2はアジア太平洋と北米で発生する見込みだ。
ジェネレーションXの責任の重さは、消費支出の傾向にも表れている。
画像出典:World Data LabX世代の影響力は地域によって異なる。
- 高所得国(欧米・日本):消費の2/3を占め、長寿・高所得・少子傾向により強い影響力を持続。
- アジア太平洋地域:X世代人口が世界の61%を占めるが、中国では2015年以降、ミレニアル世代がすでに支出で上回っている。
- ラテンアメリカ:メキシコではミレニアル優勢だが、ブラジルでは2028年以降、X世代が主導権を握る可能性。
- 中東・北アフリカ地域:旅行支出の伸びが顕著(ホテル支出+9.8%)。
美容分野の消費拡大も顕著で、2025年時点で世界全体の4分の1をX世代が占め、2030年にはさらに成長する見込みである。
ジェネレーションXの消費は、平均寿命が長く、所得が高く、家族規模が小さい高所得国市場において、より大きな影響力を持っている。
画像出典:World Data Lab2030年代前半には、ミレニアル世代が総支出額でX世代を上回る見込みだ。だが一人当たり支出では、X世代は依然として最上位に位置し続けるだろう。
 
10年後、最年少のX世代が退職期に入る頃には、支出の重点は医療·金融·ウェルネスへと移行する見通しである。また、彼らは「グレート·ウェルス·トランスファー(巨額資産の世代移転)」の主要な受益者となる。ベビーブーマー世代からの資産継承により、X世代は再び消費市場で重要な役割を果たす可能性が高い。
 
2035年頃にはミレニアル世代、2040年頃にはZ世代が主役に交代すると見られる。しかし、現時点で「財布と影響力」を最も握っているのは間違いなくジェネレーションXだ。
 
彼らの消費は単なる数字ではなく、「家族を支える責任」「社会を循環させる現実感」、そして「次世代への橋渡し」を象徴している。静かで堅実なこの世代が、今まさに世界経済の屋台骨を支えているのである。